生前に家の名義を子に移したい!親が生きているうちに名義変更できる?

相続

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生前に家の名義を子に移したい

「この記事の監修:弁護士 宮内 裕(宮内法律事務所)

親が高齢になってくると、「将来のことを考えて、今のうちに子どもへ家の名義を移しておきたい」と考える方は少なくありません。実際、生前に名義変更(所有権移転)をすることは法律上可能です。

しかし、そこには事前に理解しておくべき重要なポイントが多数存在します。本記事では、生前に家の名義を親から子に移す際に押さえておくべき注意点をわかりやすく解説します。

生前に家の名義を親から子に移すには

結論から申し上げますと、親が生きているうちに親の名義になっている家を子に移すことは可能です。

そして、対価を支払わずに子の名義に変更する行為は、法律上「贈与」に該当します。不動産は高額なものであり、贈与にあたっては贈与税が発生する可能性が非常に高い点が大きな注意点です。

贈与税は高額になりやすい

贈与税は年間110万円の基礎控除を超える部分に課税されます。家の評価額は数百万円から数千万円に及ぶのが一般的であり、基礎控除内に収まることはほとんどありません。
例えば、不動産の価額が2,000万円を超えている場合、贈与税額が200万円以上になることがあります。

相続時精算課税制度の利用

贈与税負担を抑える方法として「相続時精算課税制度」を利用する方法があります。この制度を使うと、2,500万円までの贈与について贈与税がかかりません。
ただし、制度を選択すると将来の相続時には贈与財産を含めて計算されること、またこの制度を選ぶと原則として後から変更できない点に注意が必要です。

生前に名義変更するメリット

贈与税の問題はあるものの、生前に名義を子へ移すメリットも存在します。

相続手続きの簡略化

親が亡くなった後の相続手続きは、戸籍の収集、相続人全員の同意、不動産の名義変更など、多くの手間と時間がかかります。
生前の名義変更を行っておけば、相続発生後の不動産登記手続きが不要になるため、遺産分割でのトラブルを避けやすいという利点があります。

親の意思を確実に反映できる

「この家は長男に継いでほしい」などの親の意向を、生前のうちに確実に実現できます。

遺言書を作成する方法もありますが、相続人間でのトラブルがないとはいえません。そして、相続時に親の意思が確認できない状態になると、兄弟間で意見が食い違うケースもあります。

生前に名義変更するにあたっての注意点

一方で、生前の名義変更にはデメリットやリスクもあります。むしろこちらのほうが重要で、慎重に判断する必要があります。

高額な贈与税の負担

前述のとおり、贈与税は非常に高額です。相続税よりも税率が高いため、「節税のために生前に名義変更する」という考え方は基本的に誤りです。

親が住んでいる家を子が所有するリスク

名義を子に移すと、その家は法的には子の所有物になります。
そのため、「子が家を勝手に売却してしまう」「子に借金があり、家が差し押さえられる」「子が離婚し、財産分与の対象となる」といったリスクが発生します。
親が安心して住み続けられなくなる可能性があるため、注意が必要です。

兄弟間の不公平感

家は高額な資産です。生前に一人の子だけに不動産を贈与すると、将来の相続で他の兄弟が不満を抱く可能性があります。
遺留分や遺産分割での対立に発展することも少なくありません。

なお、相続発生後に名義変更を放置した場合にも、深刻なトラブルが生じることがあります。詳しくは「不動産相続で名義変更をせず放置すると起きるトラブル」もあわせてご覧ください。

相続発生後に名義変更を放置した場合のリスクについても、あわせて確認しておくことが重要です。
不動産相続で「名義変更しないまま放置」すると起きる5つのトラブルはこちら

名義変更をするなら内容の整理が重要

生前に名義変更を行う場合であっても、親が引き続きその家に住み続けるのが一般的です。その場合には、使用貸借契約を結ぶ(無償で住む)など、親の居住を守る契約を取り交わす方法もあります。

民事信託(家族信託)という手もある

民事信託(家族信託)とは、財産の管理や運用を信頼できる人(家族など)に託し、財産を承継・管理できる仕組みです。高齢となった親が所有する不動産を将来的に円滑に引き継ぐ手段として、近年注目されています。

ただし、節税対策としてはあまり有効ではありませんので注意が必要です。

民事信託(家族信託)のメリット

民事信託を活用することで、以下のメリットがあります。

親の判断能力が低下しても財産の管理が可能

判断能力が低下すると、本人が財産を管理することが困難となりますが、信託財産にしておけば、親の判断能力が低下してしまった場合でも、信頼できる家族が代わりに家を管理することができます。

家庭裁判所の関与が不要

似た制度として任意後見があります。しかし、任意後見は家庭裁判所の関与が必要です。一方で民事信託(家族信託)は契約であり、家庭裁判所の関与は基本的に不要です。

相続登記・名義変更を含む相続全体の流れは、→福岡の相続・遺産分割完全ガイドで確認できます。

まとめ

生前に家の名義を親から子に変更することは法律上可能です。しかし、「高額な贈与税」「親の住居確保の問題」「相続人間の不公平」といった問題点が発生することもあります。
将来的な相続のための対策が目的であれば、遺言書の作成や、民事信託(家族信託)、任意後見など、他の方法が適している場合も多くあります。

生前の名義変更は一度行うと取り消しが難しいため、親子だけで判断せず、弁護士などの専門家へ相談し、総合的に検討することがおすすめです。

この記事の執筆者

宮内法律事務所 代表弁護士 宮内 裕
(福岡県弁護士会所属 / 登録番号:第44371号)

「法的な正しさ」と「人としての納得」を両立させる。

元福岡県庁職員という、行政実務を知り尽くした異色の経歴を持つ弁護士。福岡・博多を中心に、相続・交通事故・企業法務の3分野に特化して活動中。

相続や遺産問題では、遺産分割から、高度な交渉が必要な使い込み調査・遺留分請求、複雑な事案、数億円規模の解決など相続全般を対応。

交通事故では、300件以上の対応実績で、適正な後遺障害認定と賠償獲得のため、保険会社とのタフな交渉を代行。企業法務でも、元行政職員の視点を活かし、未然に紛争を防ぐ予防法務とリスク管理を得意とする。

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