2016年 7月 の投稿一覧

中小企業は複数の金融機関とつきあうべき

先日、中小企業にアドバイスする士業のためのセミナーを受講しました。

講師の方は、地域金融機関を経て独立されたコンサルタントの方でしたが、勤めておられた金融機関が破綻した際に、新たな融資が受けられなくなった取引先企業のうち、生き残った金融機関には、共通点があったとのことでした。

皆さんは、何だと思われますか?

私は、当てられましたが、正解にはたどりつけず・・・。

正解は、複数の金融機関とのつきあいがあったことだそうです。

確かに、複数の金融機関とつきあいがあれば、一つの取引先が破綻しても、他から助けてもらえる可能性はあるので、当たり前といえば、当たり前ですよね。

また、平時であっても、融資を受ける際に、金融機関との交渉が有利になるようです。

この際に、中小企業は、信用組合や信金などの地域密着型の金融機関と取引をするのが重要だそうです。いざというときにメガバンクや大手地銀が中小零細を救済してくれるかといえば・・・。

というわけで、私もメインの地銀以外に近所の信金で新しく口座を作ることにしました。

お勧めの遺言方式

危篤時など特別な場合でない通常の場合に作成される普通方式の遺言には、①自筆証書遺言、②公正証書遺言、③秘密証書遺言の3種類があります。今回は、これらの作成方式とそれぞれのメリット、デメリットを簡単にご説明して、一般にお勧めしているものをご紹介します。

まず、①の自筆証書遺言ですが、これは民法968条1項に、「自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。」と規定されており、①遺言者が自筆で全文を書いた上で、②日付(3月吉日などの特定できない日付は×。)と氏名を自署した上で、③これに押印することが必要です。したがって、当然ですが、自分で全文を自書できることが必要です。これらの要件を満たしていないと、方式に反したものとして、無効になります。メリットとして一般に言われているのは、①遺言内容や存在を秘密にできる、②証人の立会を要しない、という点です。デメリットは、①字の書けない人は利用できない、②要件を満たしてないため無効とされるおそれがある、③偽造、変造、隠匿、紛失のおそれがある、④家庭裁判所による検認手続を要する、という点です。

次に②の公正証書遺言ですが、民法969条に規定されており、①証人2人以上の立会い、②遺言書が公証人に対して遺言の趣旨を口授する(口頭で話す)、③公証人の遺言者の口述の筆記(書面にする)、④遺言者および証人に対する読み聞かせ、又は閲覧、⑤遺言者および証人の筆記が正確なことの承認(口頭)、署名、捺印(遺言者が署名できない場合は、公証人がその事由を付記して署名に代えることもできる。)、⑥公証人の以上の方式に従って作成した旨の付記、署名、捺印という方式で作成される者です。公正証書遺言は、プロである公証人が作成してくれるので、方式違反で無効の危険は小さいですし、希望すれば、日当の負担が必要ですが、自宅まで公証人が出張してくれます。長所は、上記の自筆証書遺言の短所がカバーされる点です。短所としては、①証人の立会があるため遺言内容が事前に漏れる、②作成費用がかかる、という点がよく言われています。ただし、証人については、一定の信頼できる方に頼むことでカバーできますし、費用についても、検認手続きがいらないため、結局費用は自筆証書遺言よりも安く上がる場合も多いと思われます(検認手続きを弁護士に依頼した場合には、報酬が発生します。)。したがって、デメリットとされる点はさほど大きなものといえないので、遺言の方式について相談を受けた場合、私としては、公正証書遺言の作成をまずお勧めしています。

最後に、秘密証書遺言ですが、これは民法970条に規定があり、①遺言者が遺言の内容を記載した書面に署名捺印する、②遺言者がその書面を封筒に入れて①で使用した印で封印する、③遺言者が②の封書を公証人1人および証人2人の前に提出して、自己の遺言書である旨並びに書面を筆記した者の氏名、住所を述べる、④公証人がその証書(書面)を提出した日付および③で遺言者が述べた事柄を封紙に記載した後、遺言者・証人とともに署名捺印するという方式で作成されるものです。

秘密証書遺言のメリットは、遺言内容を完全に秘密にできることですが、遺言の存在は秘密にできません。デメリットですが、①内容が記録保管されないため、隠匿・紛失のおそれが回避できない、②家庭裁判所による検認手続を要するというもので、公正証書遺言のメリットを放棄しても遺言の内容が誰にも知られたくないという希なケースを除いては、あまり利用価値はないものと思われます。

以上から、遺言の作成を検討される場合は、公正証書遺言遺言がお勧めです。弁護士に依頼頂ければ、公証役場とのスケジュール調整から遺言の内容のアドバイス、証人のご紹介なども対応できますので、まずは、お気軽にご相談下さい。

特に糟屋郡や博多区の方は、出張しての相談にも対応可能です。

亡くなった親族の借金

最近、相続に関してよくお受けする相談が、「親が亡くなった後で、○○債権回収という会社から親宛に多額の借金の支払いを請求する手紙が来ているのを見つけた・・・。」というものです。

親御さんが生前、家族に内緒でお金を借りていたが、亡くなったことで発覚するケースが結構あります。プラスの財産がない場合で、相続開始を知ってから(通常は親御さんの死亡を知った時になるでしょうが)3ヶ月(熟慮期間と言います。一定の場合には家庭裁判所に申立を行い、延長することもできます。)以内であれば、相続放棄という選択もありますが、同居してきた自宅など相続したい不動産などがある場合なども多く、結構悩ましい問題になります。 ただ、一番多いのが、取引履歴を調べてみると、最終弁済期限から5年以上が経過していて、もとの借金について消滅時効が完成しているケースです。このケースであれば、債権者に対して時効を援用する意思表示をすればよく(時効が完成しているので払いません、という意思を伝える)、安心して積極財産を相続することができます。

いずれにしても取引履歴を取り寄せて時効が完成しているかどうかについて、弁護士に相談された方が安全だと思います。

また、遠方に住んでいて音信不通だった親御さんが死亡し、一応生前の遺品を整理した際に借金があるような形跡もなかったので、相続放棄をせずに、3ヶ月以上が経過した後で、急に、親御さんの債権者が現れた場合でも、あきらめる必要はありません。相続債務が存在しないか、あるいは相続放棄の手続をとる必要がない程度の少額にすぎないものと誤信したたに相続放棄の手続きをしておらず、かつ、そのように信ずるについて相当な理由があるときは、相続債務のほぼ全容を認識したとき、または常識的に見てこれを認識できるときから熟慮期間の3ヶ月が起算されることになります。

ただし、この場合には、相続放棄の手続きを家庭裁判所で行う場合に、上記のような特別の事情があることを説明する必要があります。法律的な問題についての専門的な知識が必要になりますので、この場合も弁護士に相談されることをお勧めします。