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信用保証協会の「経営者保証免除対応制度」をご存じですか?

経営者のみなさま。信用保証協会の「経営者保証免除対応制度」をご存じでしょうか? 「コロナ借換保証」を利用して借換を行う際、一定の要件を満たせば経営者保証を解除できる制度です。利用対象企業は多いものの、利用している事業者はそう多くありません。今回はその2つの理由と、それを乗り越えて利用する方法を説明いたします。

1.理由その1:金融機関が利用したがらないから

金融機関は、「できる限り保全を確保しておきたい」と思うものです。「経営者保証を取れる先からは取っておきたい」と考えるのは当然。そのため「経営者保証免除対応制度」の対象企業にも、金融機関側からの提案はないものと考えておきましょう。

2.理由その2:担当者が制度の存在を知らないから

プロパー融資、信用保証協会の保証つき融資、日本政策金融公庫や福祉医療機構、中小企業基盤整備機構等の代理貸付など、金融機関はさまざまな融資制度を取り扱っています。

さらに融資制度以外にも、金融機関によっては投資信託や保険の販売を取り扱っていることも。覚えることがたくさんあり、すべて把握している担当者がどれだけいるか…。大多数は、各種融資制度の熟知までは困難。「経営者保証免除対応制度」を知らないことも大いにあり得ます。

3.事業者側から利用の依頼をすればいい

上記の理由で、事業者側から依頼しなければ、経営者保証免除制度を適用してもらえることはほとんどありません。優秀・勤勉、取引先思いの担当者なら提案してくれるかもしれませんが、期待は禁物。とはいえ金融機関が利用したがらなくても、担当者が制度の存在を知らなくても、事業者側から「経営者保証免除対応制度を利用したい」と依頼すれば対応はしてくれます。こちらから明確に伝えればいいのです。

4.「経営者保証免除対応確認書」記載の経営者保証免除対応要件

すべてではありませんが、多くの都道府県に共通する「経営者保証免除対応の要件」は、次の2点です。

(1)令和2年1月29日時点における直近の決算から確認書記入日時点における直近の決算までのいずれかにおいて資産超過であること。

(2)直近の決算における法人と代表者との関係において、法人と経営者の資産・経理が明確に区分されており、法人と経営者の間の資金のやりとり(役員報酬・賞与、配当、オーナーへの貸付け等)について、社会通念上適切な範囲を超えていないこと。

もちろん最終的には「金融機関として総合的に判断」されるので、上記2点の要件をクリアしても絶対に経営者保証が免除されるとは限りません。

しかし、もし、上記要件を満たしていて、なおかつ「コロナ借換保証制度」を利用して借換を行う予定であれば、一度、取引金融機関に問い合わせされることをお勧めします。

経営者保証の解除・免除をしてもらうために

2023年5月9日(火)の日本経済新聞に、興味深い記事がありました。「原則、経営者保証を求めない」地方銀行と、「プロパー融資の経営者保証を廃止」した地方銀行の名前が記載されています。

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO70797560Y3A500C2EE9000/

※「地銀、経営者保証求めず」で検索

1. 「原則、経営者保証を求めない」「プロパー融資の経営者保証を廃止」した銀行名

上記の日本経済新聞の記事によると、「原則、経営者保証を求めない」地方銀行は

「北洋銀行(北海道)」「八十二銀行(長野県)」「紀陽銀行(和歌山県)」「山陰合同銀行(島根県)」「西京銀行(山口県)」「阿波銀行(徳島県)」「福岡銀行(福岡県)」「十八親和銀行(長崎県)」「熊本銀行(熊本県)」

「豊和銀行(大分県)」「琉球銀行(沖縄県)」の11行です。

また、「プロパー融資の経営者保証を廃止」した地方銀行は、「北国銀行(石川県)」の1行のみです。

経営者保証を免除や解除するために絶対必要なことは

「経営者保証を求めない金融機関や経営者保証解除に積極的に取り組んでいる金融機関と融資取引を行っておく」

ことです。

21行取引しかない事業者には難題

経営者保証解除に消極的な金融機関といくら交渉しても、前向きな対応は期待できません。とくに1行取引の事業者が相手の場合、その傾向が顕著です。以下、金融機関の視点で考えてみましょう。

取引先の立場のほうが弱いと踏んだら、金融機関が自行に不利な条件で融資を行うわけがありません。極端な話、「弊社が貸さなければ、他から資金調達をすることができませんよね? 弊行の条件を受け入れられないなら融資はできません」という姿勢を取れるからです。

3.他の選択肢があれば交渉の場に立てる

一方、他に「経営者保証を求めない金融機関」や「経営者保証解除に積極的に取り組んでいる金融機関」と融資取引がある企業に対しては、強い姿勢で交渉しにくいもの。

「経営者保証の解除なんてとんでもない」と自行の条件を主張したところで、「では他の金融機関に」と逃げられるのがオチです。最悪の場合、いま融資している「既存融資」も他行に「経営者保証免除」で「肩代わり」されることもあり得ます。

「経営者保証に関するガイドライン」の要件をクリアしている企業は、通常、金融機関にとって「優良融資先」であることが少なくありません。そんな優良融資先の既存案件を「他行肩代わり」されてしまうと、担当支店の評価は急落。とくに支店長は、肩代わりを防ぐ策を講じざるを得ません。

他行との融資取引がどれだけ有利に働くか、これでおわかりでしょう。他行の選択肢を持っておけば既存融資の経営者保証解除も、また新規融資の経営者保証免除も、交渉する余地が生まれるのです。